患者さんの心に響く言葉遣い
敬語は人間関係を円滑にする
医療接遇における「話し方」にはさまざまなポイントがありますが、特に重要なのは「敬語」です。しかし、敬語を苦手とする人も少なくありません。あらためて敬語の使い方について見ていきましょう。
敬語で話すことによって相手を「大切にしている」ということが伝わります。接遇研修でもまずは敬語の基本をきちんと身につけるべく、ワークシートなどを用いて自分の敬語力を確認するところから始めます。敬語の基本を理解していれば、相手に合わせて言葉を崩すことが可能になるからです。ところが医療現場では患者さんに対して敬語を使わずにフランクな口調で話しかけている様子をよく見かけます。特に高齢の患者さんに対してその傾向がありますが、それは距離を近づけるためにあえて敬語を使わない方法を取っているためです。しかし、「親しみやすさ」と「馴れ馴れしさ」は違います。もし患者さんの家族がフランクな言葉遣いで話しているのを聞いたらどのように思うでしょうか。見下されている、笑いものにされている、と思い、不愉快に感じる可能性があります。
言葉は臨機応変に使い分けよう
人間関係を円滑にするために欠かせない敬語ですが、使い方が難しいため戸惑う人もいることでしょう。敬語は相手を敬う気持ちを示すための言葉です。そのため、年長者である高齢の患者さんに対しては敬語で話すのが基本ですが、相手が分かる言葉を使わなければ正しい敬語を使っていても伝わりません。患者さんに分かりやすいように丁寧に親しみをこめた言葉遣いを意識しましょう。
分かりやすさを重視するとなると時には正しい敬語の使い方から外れてしまうかもしれません。しかし、患者さんの立場になって考えてみると正しい敬語を使うよりも、クッション言葉を上手く取り入れながら臨機応変に最適な言葉で伝えた方が理解しやすいはずです。クッション言葉にはいくつかバリエーションがあります。その時々で使えるようにいくつか揃えておくといいでしょう。クッション言葉に温もりを感じる言葉を添えると良好な関係を築きやすくなるため、患者さんだけではなく看護師同士の会話にも利用できます。
言葉遣いは状況によって変化する
患者さんとのやり取りや看護師同士の会話は丁寧語やクッション言葉で対応できます。しかし、クレーム対応などでは尊敬語や謙譲語も使います。状況に応じて正しい言葉を使い分けられるようになるのが理想ですが、そのためには基本となる言葉遣いをきちんと理解しておかなければなりません。正しい敬語を身につけておけば状況が変化してもすぐに対応できるでしょう。