最低限のマナーは守ろう
意識し過ぎるのもよくない
医療業界は他のサービス業のように客層を絞ることはできません。病院には妊婦さんや赤ちゃん、子どもや老人などさまざまな年代の人が訪れます。小児科のようにある程度患者さんの年代を区切っているところもありますが、総合病院などではあらゆる年代の人に医療サービスを提供することになります。
病院と同じように老若男女、幅広い世代を相手にするサービス業といえば携帯電話ショップが思い浮かびますが、携帯電話ショップではホテル業界のような高いレベルの接遇を意識しています。制服の統一をはじめ、正しい日本語の使い方やお辞儀の角度などレベルの高い教育を徹底していますが、なぜかお客様からのクレームも少なくありません。顧客満足度を考えると高いレベルの接遇は必要ですが、常時そのレベルで接しているとお客様のハードルも引きあがってしまいます。丁寧な接客が当たり前となっているため、些細なことが大きなクレームにつながってしまうのでしょう。
医療機関に求められる接遇
接遇教育に力を入れている病院が増えていますが、患者さんは看護師に対して携帯電話ショップの店員のような接遇を求めてはいるわけではありません。しかし、病院の経営が厳しくなってきている今、少しでも患者さんを獲得しようと患者さんをお客様扱いする考え方が広まってきています。接客のプロを講師として招き高いレベルの接遇研修を行う病院が増えていますが、患者さんの呼び込みに有効だとは必ずしもいえません。なぜなら接客業のマナーと医療業界のマナーは異なるためです。
病院に寄せられるクレームで多いのが「カルテばかりを見て直接患者さんの顔を見ない」「敬語で話さない」「あいさつをしない」といった最低限のマナーすら守れていないケースです。初対面の人には決してしないような態度で患者さんに接してしまうのはなぜでしょうか。それは看護師は医療のプロであるという意識が強く、医療知識が乏しい患者さんを無意識に下に見る傾向があるからでしょう。このような態度は相手を委縮させてしまうため、患者さんの不満につながってしまいます。
もっとも大切なのは不安を和らげること
自分よりも知識のある人と話をする時は緊張するものですが、特に医療分野ではその傾向が強いようです。患者さんは病院にきた時点で何らかの不安を抱えています。まずはその不安を取り除くことを優先しましょう。そのためには「話をしっかりと聞くこと」が大切です。しかし、対応しなければならない患者さんは1人ではありません。限られた診療時間の中で多くの患者さんに対応するためには時間が圧倒的に足りないのです。1人で頑張ろうとせず、他のスタッフにも頼りましょう。受付スタッフが診察前に予備問診を行い、看護師は診察後にしっかりとフォローするだけでも大分違います。患者さんの満足度をあげるためには1人ひとりの意識はもちろんですが、チームで対応できるようにすることも大切です。