「接遇」と「接客」の違い
接遇を意識する時代に
「医療業界はサービス業」といわれることが増えたせいか、多くの病院では接遇の重要性を意識した教育を行っています。また、患者さんの満足度を向上させるために接遇委員会や顧客満足推進委員会などを立ちあげている病院もあります。接遇を意識している病院では患者さんのことを「患者様」と呼ぶ場合があります。なぜ患者さんに「様」をつけて呼ぶようになったのでしょうか。まずはその背景から考えてみましょう。
サービス業というとレストランなどの飲食業界やホテルや旅館といった宿泊業界、そしておもてなし精神が高い航空業界をイメージする人が多いでしょう。これらの業界では提供したサービスに対してお客様から直接代金をいただいています。病院も患者さんからいただく治療費で成り立っているため、お客様と同じように患者様と呼ぶ病院もあるのです。
看護業務の中に接遇スキルを導入する
病院で働く医師や看護師はこれまで、「医療行為」や「看護業務」はマナーや接遇とはまったく別のものとして考えていました。接遇を意識する病院が増えてきているとはいえ、ほとんどの病院が看護業務に接遇スキルを「追加する」と考えているようです。しかし、それでは病院全体の好感度をあげることはできません。普段行っている医療行為や看護業務の中に接遇スキルを「取り入れる」ことが、患者さんの満足度アップにつながります。
「接客」との違い
接遇を意識すると「接客」との違いに目がいくことでしょう。接遇と接客は別のものだと認識している人もいますが、接客は接遇の一部分にしかすぎません。サービス業にとって接客はとても大事な要素です。しかし、接客スキルを高めるだけでは患者さんの期待には応えられないでしょう。接客スキルが高くても接遇スキルそのものが低ければ、最適な治療を行っても高評価は得られないからです。
「接遇」と「接客」は何が違うのか、あいさつや言葉遣い・表情を例にして比較してみましょう。まずはあいさつです。相手と対面した時最初にする「あいさつ」は自分を印象づける大事なポイントです。接遇では相手に威圧感を与えないように、自然に柔らかくあいさつすることを意識しますが、接客はお辞儀の角度や手の位置など作法を大切にします。次に言葉遣いについて見ていきましょう。接遇も接客も敬語の使い分けは当然ですが、接客は明るい表情を意識するのに対して接遇は相手の状態を察知して適切な表情で話すことを意識しています。そのため、接遇では笑顔以外の表情で患者さんと接することもあります。